2009年11月18日
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下高井戸とは何か・バス問題について

Written By: 川俣 晶連絡先

 「下高井戸周辺史雑記」としていることから分かるとおり、扱い範囲は「下高井戸」に限らないわけですが、これはせめて「下高井戸」ぐらいはしっかりやりたいと思っていることも示します。これが「周辺」の意味です。「史」は基本的に興味が過去にあることを示します。

 という話はさておき。

 9月に桜上水Confidentialさんから頂いたメッセージですが、足りない視点があると気づいたので、ほぼ全文を引用した上で、付記します。

> 桜上水、下高井戸を起点、或いは通過点とするバス路線について

>

> 京王に直接メリットなしは、川俣さんご指摘のように思えます

> いくつか(反論ということではないです)

> バス路線充実への期待です

>

> 1.小田急バス

> 驚いたことに、小田急バスの本社は仙川にあります。

> 一昨年、白百合学園方面に行く用事があり、仙川駅北口にある小田急バスの発着所を> 通りかかり、その時、初めて知りました。

> その後、時間のあるときに調べたところ、小田急バスは、小田急電鉄が設立したもの> でなく、三鷹、調布を営業基盤とするバス会社を小田急が1950年に買収して社名変更し> たと分かりました。

>

> 2.京王沿線バス網の貧弱

> 我が家は、震災後、世田谷に移住したものですが、私の幼少のころは東急の地盤に住> んでまして、父親は、丸の内までバスで通勤していた(一時間もかからず、座って往復> できたそうです)ことがあります。

> やがて、桜上水(当時の上北沢一丁目)に移り、そこでも経堂から丸の内までの直通> バス(東急と都バスの共同運行?)がありました。

>

> そのような経験から、東急、或いは、最近の小田急のバス網充実にかんがみ、京王沿> 線、特に環七ー環八間のバス網は、あまりに貧弱であり、それは、隣接する調布、三鷹> との比較においても、相当の見劣りがするものでした。

>

> 3.私たちはよく歩く人たちだ

> 仕事でいろいろなところに出張します

> よく驚くのは、地方都市で、訪問先の人に場所を尋ねると「駅前です」と言われたも> のが、「何分ぐらいですか?」と聞くと、「さぁ5分くらいでしょうか」

> 結果が15分で、何のことはない。歩いたことがないんです。

> 沖縄の人は、400m以上は歩かないでタクシーを利用すると言います。(歩く人は> いるんでしょうけど、本当にまばらです)

> 僕らは、どこへ行っても15分ぐらいなら、あるくのが当たり前で、タクシーなど金> の無駄と考えますけど、地方は、完全に車社会ですね。10分以上歩く人は稀のように> 見えます。

> 歩道が両側にきちんと整備された道路に一人も歩行者がいない という状態が普通の> ところも多い。

>

> 4.タクシーがまた違う

> 今は、明大前にタクシーが多少入りますものの

> 最寄駅が下高井戸、桜上水であっても、

> これらの駅にはタクシー乗り場がありませんもので、

> 桜上水5丁目の人でも(駅から徒歩10分以内)、経堂からタクシーに乗る人があり> ます

> 僕も用事で経堂とか、祖師谷大蔵へ行くときは、自転車に乗れない雨の日、夏の暑い> 日は、タクシーが欲しいなと思いますけど、わざわざ呼んでまで乗る気がしないので、> 電車で25分とかかけることになります。

> (わざわざ嫌いな水道道路へ出て、往生際悪く、タクシーを探しますけど、まず、5> 分以内に空車にあたることはなく、だいたい駅へついてしまいます)

>

> 5.駅前空間の必要性

> 結局道がない

> というか

> 東急の祐天寺とか、都立大学だって、ろくな道はないんですけど、

> コミュニティーバスとか、タクシー乗り場がある

> 桜上水南口は、駅前から2分も歩けば商店がとぎれ、一、二、三丁目では、赤堤通り> までの間に、コンビニ的なお店は一丁目の一軒しかありません。しかも、たぶん夜は営> 業しない個人商店です。

> 駅前に、ある程度の空間があれば、それらが整備され、ささやかではあるけれど、日> 常生活が広がる。

> まだ、足腰が弱るには何十年かあるでしょうけど

> 車がないと生活しにくい ということでは、出かけるのが億劫になる

> 両親の年齢が上がり、そういったことが、意外と地域社会のモビリティを支配するこ> とが分かってきました

 さて、御説はごもっとです。

 実際、「私たちはよく歩く人たちだ」は良く分かります。都会人の方が田舎の人よりもずっと歩きます。

 これを下高井戸方面に敷衍した場合、もう1つ問題があることに気づきました。

 それが「世田谷区」と「杉並区」の境界問題です。

  • 京王のバス会社が下高井戸を撤退したのは単に甲州街道の拡幅で車両基地の土地を削られて手放しただけだろう (かつては永福通りやもっと以前は甲州街道を通っていた)
  • 補助128号線の計画は東寄りを通り、下高井戸の中心を通らないが、バスターミナル等は補助128号線沿いに作られるようだ
  • 補助128号線のバス路線にやる気があるのは小田急や京王のバス会社で、「杉並区」は入らないようだ
  • そもそも下高井戸駅は「世田谷区」側にある
  • つまり杉並区の「すぎ丸」は駅近くには最初から入れないことが宿命づけられている
  • 下高井戸駅は常に東に延びていくが(そのための旧カーブのホーム)、それには「東急との接続」「踏切」「勾配」などの問題があると考えられるが、他に「杉並区側に入らないor入りたくない」という理由があるかもしれない

 実は、もし京王線を立体化するなら、ということを考えました。最初に思いついたのは、下高井戸駅の東側への移設です。高架、または地下であれば地上の勾配は意味がありません。世田谷線との乗り換えが少し不便になりますが、その程度はどうでも良い話です。既に北側からのアプローチは非常に遠回りを強要されています。

 そうすると駅の位置は大踏切の上下の西に移動します。桜上水駅と統合しても良いぐらいです。そして、日大あたりまめ含めて考えると、より下高井戸駅に便利な位置になると思います。公園通りにも近いし。

 しかし、そうすると「杉並区に入ってしまう」という問題があり、もしそれを避けたい理由があればできないことになります。

 もう1つ考えたのは、大深度地下ならたぶん、現行路線と同じにする必要が無いことです。曲線の緩和や京王本線をそのまま甲州街道地下に移動させる等も考えましたが、やはり「杉並区」側に入ってしまう割合が増えてしまうリスクがあります。

 というわけで、積極的なデザインを描けない理由は「予算」の他に実は「区の境界」という問題があるかもしれません。

感想 §

 やはり「区の境界」という発想は、東急や小田急と比較して京王が高架複々線化で後手にまわる理由として魅力的です。これは調整に手間取りそうだから。

 ならば、本線は杉並区に入っても構わないのかという問題もあります。

 実は京王線高架化都市計画素案説明会の筆頭が「都」である理由も良く分かります。「区」の境界をまたぐ問題は、「都」が筆頭になって初めて動けるのでしょう。

 ちなみに、私自身は補助128号線には反対ではないし、バスターミナルは現実的にそこに作るしかないことも分かりますが、もし下高井戸駅の中心がこれ以上東に動くようなら距離的なメリットがほとんど無くなって桜上水駅を利用するかも。

下高井戸周辺史雑記